時々ふと、行ったことがないってより、その名前も存在も知らなかった街に行ってみたくなる。
単線の線路を持つ、電車の時間以外は誰もいなくなる、そのくせそこが街のメインストリートになるような駅。
そんな駅の駅前旅館。
ビジネスホテルや、あるわけないけど決してリゾートホテルなどではならぬ。
靴を脱いで建物に入るような木造旅館。
部屋には座卓の上にお茶道具。窓辺には小さないすとテーブル。
窓の外にはつぼ庭。小さな池にいる金魚、静かに絶え間なく聞こえる水の音。
少ない民放チャンネルしか映らないテレビ。
気分的には冬なんだけど、あまりにせつなくなってしまいそうなので、季節は秋くらいまでかな。
行き先はまた、南国などであってはならない。
長野より北、新潟や山形、日本海側。
海は大好きだけど、この旅館行きに限り、海はなくてもいい。
他者の存在を感じることもない陰気な旅館で、お仕着せの夕飯をすませてお風呂に入ったら、もうすることがなくなって布団に転がり
持ってきた角川文庫(新潮ではダメ、まして幻冬舎などは論外)をぺらぺらとめくって、時間を潰す夜。
あぁ、そんな一人旅を私はしたい!
