id:Kodakana は
自分(id:Kodakana)のことを語る

「レスリングがおもしろくないなら、やめればいいじゃない」
友人にもそんなことを言われた江戸城址公園の夜、屋台レーンに店もまばらになり始める時刻…。
 
長須涼は新日本大学の女子レスリング部に所属する三年生である。長須涼は高校のときレスリングで優秀な成績を収め、新日本大学に招かれるかたちで進学した。新日本大学女子レスリング部の監督は鈴木啓美であった。鈴木監督は現役時代に期待されながらも不慮の事故がもとで世界では勝てず、指導者になってからは世界的な大会で一位を獲れる選手を自分の手で育てることを強く願ってきた。涼は上背こそレスリング選手としてはある方ではないが、比較的筋肉がつきやすい体質で、運動神経もよく、入部以来鈴木監督は過ぎるほど期待をかけていた。
 
確執は次の世界規模の大会へ向けての国内予選となる大会についてのことからだった。レスリングは一度計量を通ってしまえばその後はどれだけ体重が増えても構わないという規則であり、多くの選手が計量前に短期的な減量を行う。鈴木監督は今回も涼に減量して一階級下の予選に出るように指示した。それはいつものことだ。今までは何も思うことなくそうしてきた。だからそうすれば余程のことがない限り世界の舞台まで駒を進めることはできる。それはありありと想像できる反面、言われるままにそうしている自分の姿を我がものとして思い描くことが涼にはできなかった。
 
結局、涼は減量せずに計量を受けることを主張した。そうすれば実質的には一階級上の選手と当たることになる。たとえ勝てなかったとしてもそれが最高におもしろいことだと涼は思ったが、監督は勝ちにこだわっていた。
 
「どこにでも飛んでいけばいいじゃないか…、アッハッハ…」
やつは嗄れた声でそんな言葉を残して、夜鳴きそばののれんを推しひろげギターケースを担いで帰って行った。涼も席を立った。
 
(構想6年)(完成まであと6年?)