id:re-feebee16 は
夢のことを語る

講習二日目の朝、ずいぶん久しぶりにしっかりしたボリュームの夢を見ました。その印象から離れることができなくて、高速を走って会場へ向かう間ずっとそこに浸ったままでした。もちろんThe Bendsを聴きながらです。radioheadの音楽って内省的なものが多いから、夢をなぞるにはちょうどいい。作中にnice dreamって曲もあるくらいだし。肝心の夢の内容はといえば、見たことも会ったこともない年上の女性が恋人という設定でした。彼女には夫と二人の息子がいます。驚くべきことに、夢は彼女の自宅のリビングから始まったのです。いかにも高価そうな家具が並ぶ整然としたリビングで、彼女は家族に自分を紹介しました。すると彼女の夫が右手を伸ばしてきました。そして握手。男と男の固い握手。二人の息子はどちらも成人していて、たぶん兄のほうだと思うのですが、彼がこちらに向かって言うのです。あなたが現れてから母さんが精神的に落ち着いた、本当にありがとう。自分としては頷くよりほか道がありませんでした。やがて彼女が、もちろん家族の目の前で、自分へ身体をすっと寄り添わせて、白い頬を左肩に乗せました。そして上目遣いで深々とこちらの瞳の奥を見つめ、唇を重ねてきました。柔らかな、とても静かなキスでした。どこまでも長い時間のようでもあり、瞬きの間に消えた出来事のようでもあるキス。唇が離れると、彼女はもう一度こちらを見つめて言いました。
「ほら、行くべきところへ行くんでしょう?」
自分は頷きました。そして彼女の夫と二人の息子といっしょに家を出ました。辺りは夜でした。我々は四人で、砕石の敷かれた庭を軽トラのほうまで無言で歩いていきました。軽トラに乗り、エンジンをかけると、彼女の夫が真剣な表情でこちらを見つめました。白髪交じりのくせ毛が丁寧に刈り込まれています。大きな額には三本の深いしわが深々と刻まれています。しかし厳しい印象は受けません。大切なことをこつこつ積み重ねてきた類の人間であることが、むしろじんわり伝わってきます。彼は言いました。こちらの山道から行くといい、集落のあいだを通るのは危険だ、妻のことをよろしく頼む。自分は頷きました。そしてギアをローへ入れ、山へ向けてゆっくり走り出しました。