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ゆきのことを語る

中学時代の私は同級生と同じようなものに全く興味がなく、特にいじめられていたわけではないけど、友達と呼べるようなひとがいなかった。
私本人はせっせと読書や趣味に邁進し、特に痛みは感じておらず、田舎だったこともあるのか多少浮いた存在ながらも、あのひとはそういうひと みたいに容認されていた。
 
一年から三年までを集めた養護学級があった。
担任は理科の先生で、とても落ち着いた人格者だった。
その先生を自分の担任より慕っていた同級生男子がいて、よくそのクラスに行っては先生と話し、その生徒たちとも仲良しだった。
特に二つ下の少女は彼をお兄ちゃんと呼び、よくなついていた。
彼女が養護学級であったこと、彼が学業優秀で人柄もよかったことで、誰もその光景をからかうものはいなかった。
 
でも、それでも時間がたつと何となく軽口で「ほらN、彼女が来てるぜ」なんて言い方がされるようになった。
それは軽いからかいで、そこには悪意は存在していなかったように思う。
 
ある日、調子に乗った私も同じように言った。
彼は悲しそうな顔で「Yもそんなこと言うの」と言った。
 
ショックだった。
彼は私がどんな人間か知っていてくれたのだと思った。
 
その後何故か、彼は何回か私に本をくれた。
「Yは本好きだろ」と言って。
彼にはお姉さんがいて、彼女が読まなくなったという少女小説だった。
卒業間際に、小さな焼き物の人形をくれた。
なんだかよくわからないけど、ただもらった。
 
 
あれは恋愛ではなかったと思う。
特に彼と親しかったわけではないし、話す機会もあったわけじゃないし。
 
中学を卒業したあと会ったことはないけれど、本と人形は今も実家の部屋の本棚にある。
 
噂では大学卒業後、東京電力に就職して結婚したらしい。
 
中学生の私に、軽薄な尻馬に乗ることの恥ずかしさを教えてくれた彼は、恩人である。
幸せに暮らしていてほしいと思う。