敬老日猫の土足を拭いてゐし
鳥居おさむ
に関する、妄想ストーリー
おじいさんとおばあさんは二人暮らし
おじいさんは偏屈な人嫌い、おばあさんは朗らかなおっとりさん
今日は敬老の集いですが、おじいさんは頑として行かないと言い、おばあさんは一人で出かけました
おじいさんは確かに偏屈ものですが、自分が一緒ではおばあさんが自分の世話に忙しく、集いが楽しめないだろうと思ったのです
おばあさんの帰りを待つおじいさん
9月の日差しはいつのまにか弱くなっていて、柱時計がボンボンボンと3時を知らせる頃には、居間も心なしか薄暗く感じられます
おじいさんの背中に温かいものがふわっと触れました
振り返ると、飼い猫のタビです
おばあさんが帰ってきてドアを開けたのだと思い、玄関を見ると、猫一匹分の隙間が開いていました
そして、上がりがまちから、廊下、居間の畳と続く、どろんこの猫の足跡
おじいさんは慌てて猫を片手で抱えると、雑巾を持ってきて足跡の掃除にとりかかりました
おじいさんは普段は掃除なんか絶対にしないのですが、楽しい集いから帰ってきたおばあさんが足跡を見つけたら、さぞがっかりするだろうと思ったのです
それに、おじいさんは知っていました
おばあさんが今日の集いに新しい足袋をおろして出かけていったことを
掃除を終え、おじいさんはタビを膝に座らせると、どろんこの手足を拭きました
タビは大人しく抱えられ、雑巾にくるまれる自分の手足を不思議そうに眺めていましたが、そのうち顔をうーんとあげると、おじいさんのほっぺにすんすんと鼻を寄せました
おじいさんはタビの重さと、身体と、ふんふんとほっぺにかかる鼻息の温かさを感じていました
おしまい
