id:kutabirehateko は
魅力的すぎるイベントのことを語る

わたくしが初めて鰹のなまり節を見たのは中学校の修学旅行の時です。
なまり節はそのとき持参した小遣いの額からすると高額でした。
けれどもわたしはそれに抗いがたい魅力を感じ、父の酒のつまみとして買って帰りました。

帰宅したわたしは両親に「ものすごく美味しいものを買ってきた!」と意気込みました。
両親はさすがに年の功です、パッケージを見てすぐに「ああ、なまり節だろ」と言いました。
この人たちはこんなに美味しいものをすでに知っていたのか・・・!

父は丸々一本なまり節が自分のものという僥倖にさして興味を示さず
なまり節は冷蔵庫に仕舞われました。

あれは父に買ってきたお土産だから食べてはいけない。
父が食べる時に少し味見させてもらうくらいにしておこう。
しかし父はなまり節にいっこうに手をつけませんでした。
いま思えば忘れていたのだと思います。

ああ、なまり節。あの甘しょっぱくほろりと崩れる鰹の身よ。
丸々一本あるのだから端の方を味見しても悪いことはなかろう。
わたしがそう思うまでにどのくらいかかったか、今となっては思い出せません。

ある日遂にわたしは逸る気持ちを抑えてなまり節のパッケージを開けました。
そして端の方をほんの1㎝ばかり切り落とし、残りを大事に仕舞っておきました。
おおこの美味しさよ。あの感動は旅の修飾ではなかったのだ。
わたしは台所で思わず爪先だってしまうほどの興奮を覚え、眩暈がしました。
わたしが次に冷蔵庫を開け、ラップと輪ゴムを外し、パッケージを開いたのはいつだったでしょうか。
覚えているのは父はとうとうわたしのお土産のなまり節を口にする機会はなかったということです。

そして今日、家族の食卓のおかずとして買ったなまり節を
あの日と同じように丸々一人で食べてしまうという魅力的すぎるイベントを完了させたことを
ここにお伝えして、ペンを置きたいと思います。