もうひとつ、エニグマネタを思い出した。
いまエレベーターのない団地に住んでいるんだけど、疲れていると階段上るのがだるい。
気を紛らわすために階段を上りながら
「1階です」「2階に参ります」「2階です」「3階に参ります」
と一人アナウンスをしながら上っている。
ある日もちおが狐につままれたような顔で帰ってきて
「ワープした」
と言った。次の階が自分の家だと思いながら階段を上がったらひとつ上の階にいたらしい。
疲れてぼんやり上の階まで行ってしまったんだと思って
「1階分上りすぎて損したね」
と笑った。ワープだワープだともちおは騒いでいたけれど、愉快なもちおだと思っていた。
先日重い荷物を持ってとても疲れて帰ってきて、
「今日は階段上りたくないな」
と思いながらいつものように階段と各階の戸口を確認しつつ上っていた。
と、一階段まるまるとばして突然うちの玄関があった。
「ねえ、いま下の階にいると思ったらうちの前だったんだけど」
「ああ、ここの階段ときどきワープするんだよ」
もちおが真顔で言った。
「俺もときどきある」
あれから次はいつワープするかと注視しながら階段を上っている。
注目しすぎると階段もやりづらいだろうなと思うんだけど。
