「ときどきすごく苦しくなって息ができんようになるたい。何でこんな風になったかねえ」
「座りっぱなしの仕事で運動しないで酒飲んでるからじゃないですか」
「いや酒はそんなに飲まん」
「いやかなり飲んでるよね」
「今日は特別よ。いつもは飲まんき」
「飲み助はみんなそう言うんですよ」
「いやほんとよ?」
「じゃあ仕事して、仕事以外の時間は家で誰にも会わずにじっとしてるんだ」
「そう。身体動かしたら心臓に負担がかかるけんね」
「でも身体動かさなかったら身体が弱るでしょう」
「そうでもないよ。そこはうまくやるけん」
「どういう風に?」
「じっとしとくんよ。負担がかからんようにした方がいいんよ」
「体操もしないんですか、ストレッチとか」
「せんねえ。じっとしとくのがいいんよ」
「うーんと、それはかなり医学の主流から外れたご意見なんじゃないですか」
「まあね。ははは」
祖父にいっさいの運動を禁じる理由はこの辺にありそう。
おかげで祖父は少し何かしようとするたび
「医者に禁じられているんだから」
と嫁と息子に叱られていて不憫。
生きることに後ろ向きなお医者さんは治療も後ろ向きみたいだ。困った。
