旅館の話2
「それからね、やっぱりどこか山の中を夜遅く家族で走ってたときよ。どこだったかしら? 山の上のほうにね、潰れちゃった旅館があったの。廃墟になっててね。それが下の道を走ってる車から見えたのよ。そしたらパパがね、『あそこにいま電気が点いたら面白いだろうな』って言ったの、ふざけて」
プロポーズの言葉を思い出すかのようにいたずらっぽく微笑むママン。
「そしたらパッ!と電気が点いたのよ、その旅館の窓に!」
うれしさ爆発。
「もうパパもママも黙ーって、まっすぐ前を見て、いっそいでそこを通り過ぎたわよ。二度とその話はしなかった。本当に恐いことはお互い話あったりできないのよねえ。いつかパパに聞いてご覧なさい、きっと覚えてるから。なんだかあの人そういうことしょっちゅうあったわよねえ」
ママンったらなにほのぼのしてるのよ。
