四半世紀近く前にわたしは家出して、それからずっと関東にいた。
ここに帰ってくる日が来ると考えたことがなかった。
もちおを相手に飲みながら、父はわたしに
「おまえが帰ってきて、俺はけっこううれしい」
と上機嫌で言った。部屋も二度ほど上がっていって、一通り見て帰って行った。
考えてみると父は、わたしが家を出てから一度も部屋に訪ねてきたことがなかった。
家出の原因になった父はあれから脳梗塞を経て、ずいぶん辛抱強く穏やかになった。
わたしは結婚して、両親に対する見方が大きく変わった。人生わからない。
母の娘であるわたしは父と継母にとってこれまでかなり微妙な存在だった。
とはいえあの父を愛し続ける継母に対する尊敬の念は、自分が結婚してから年々深まるばかりだ。
それが継母にも伝わったのか、継妹が産んだ孫パワーのなせる技か、お互い歳を取ったのか、このたび帰ってきてからの関係は驚くほどよい。
よくしてあげたいなと思うし、実際何かすると無邪気に喜んでくれてうれしい。
何より、父も継母も継妹もわたしともちおの結婚が末永く続くことを当たり前に望んでいる。
もちおとわたしを敵対させようとか、もちおがわたしに失望するようにとか思っていない。
もちおを紹介したときは父母継母揃って反対されたけど、もちおがんばったな。
世話になった生活費の分を稼いで返して早く離婚しようと長年思っていたけれど、
もう親兄弟甥姪祖父母が世話になってしまったので返せなくなったよ。
うちの家族にここまでしてくれてほんとにありがとうと思う。
