会ったことは片手で数えるほどしかない年下の男の子からのお手紙群を殿堂入りにした。
彼は飛行機きちがいで、わたしは成田へ行くたび飛行機の写真を撮って送ったり、J機内のハガキをプレゼントしたりした。彼は写っていた飛行機について熱狂的な返事を寄越し、こうして文通は続いた。手紙にはティーバッグ、飴、鰹節パックなどの実用的で場違い感のあるおまけがついてきたり、書き損じの封筒に全面ホワイトで修正を入れて住所が書かれていたり、文字通りのチラシの裏や原稿用紙、学校の提出用書類の裏面などあらゆるものが便せん代わりにされていて、ボールペンでぐりぐり勢いよく書かれた文字が勢いよく踊っていた。本当によくも悪くも正直でありのまま書いてくる。読んでいると爆笑せずにはおれず、でもその正直さと誠実さに胸を打たれることもあり、とてもきつい時期にもらった励ましの手紙は何度も読み返した。
二十代後半に入って彼も結婚を意識するようになり、今後は異性関係距離を置くと言い始め、その後わたしが結婚する少し前に相手が決まった。結婚前にそのことを伝えようと数年ぶりに電話をかけたら、先方もちょうど自分の結婚の予定を伝えようと思っていたという話だった。婚約者とは知り合ってから年数が浅く、彼女は知り合いの話が出ると相手の性別年齢によらず彼女が寂しそうにしているから、今後は連絡しないことにする、という話だった。こういう異性のただひたすら文通ばかりするという友だちは何人かいたけれど、だいたいフェードアウトでそれとなく距離を置いてという人が多い中、わざわざ言ってくるところが彼らしかった。「これまで楽しかった、感謝している。お互い元気でがんばりましょう」と最後に言って、爽やかに別れた。乙武さんによく似た男だった。元気でやってるかな。
