「はてこさんが天狗を見たいって言ったとき」
わたしが天狗が見たいと言ったとき、蕗の葉形の小さな葉っぱがくるくると回りながら近づいて来た。
落下するでもなく、舞い上がるでもなくすーっと水平に飛びながら、5mくらい先を横切る。
おもしろいなと思ってみていると、やがてヘリコプターのように道を登っていってしまった。
その時妻が山の斜面を見ながら声をあげたので、もちおはそちらに目を向けた。
「ああ、いいねえ、きれいだねえ」
するとまたも一枚の葉っぱが、今度は斜面に沿って水平に登ってきた。
それもゆっくりと、まっすぐ自分に向かってくる。
葉っぱは目の前まできてふっと止るとひらひらと落ちていった。
「うん、葉っぱ、不思議だね」
「ん? 違う違う、景色だよ」
「天狗を見たいってはてこさんが言ったからさ、見せてくれた気がしたんだ」
見てなかった!!
