宣誓
ENGAGEMENT
「婚約、破棄された……」
たぶん、あの瞬間に何かが始まり、動き出した。
結婚の約束(エンゲージ)を反故にされて、私はほんとうに「自由」になった。あのときは、そう思っていた。それはでも、思い違いで、また新たな鎖に繋がれたのかもしれないけれど。
とにかくも、私は語らなければいけない。書き記さないとならない。
私と浅倉くんとミズキさんのことを。
天使が来る直前の、数日間を。
なによりも、私自身が生き延びるために。
ところで、アンガージュマン(engagement)なんてのは、サルトルが口にしないと意味がない言葉と思う。
でも、私はここに誓う。
自らを縛り、また開放する呪文として。
文字通り、天使たちとの「契約」の証しとして、また、この「日記」のパスワードとしてこれを記憶し、ここに留める。
それが、古語においては《愛の誓い》であったことも忘れずに。
ENGAGEMENT――「下書」に記されていたテクスト、または深町姫香のパスワード より
