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歌集 『鈴を産むひばり』 光森裕樹 から15首覚え書き
疑問符をはづせば答へになるやうな想ひを吹き込むしゃぼんの玉に
どの虹も第一発見した者がゐることそれが僕でないこと
廃線になる日は銀杏のふるさとを囲ふ踏切すべてあがる日
野に置けば掛かる兎もあるだらう手帳のリングを開いては閉づ
秘め事を黒影のごと引きずって君との間に自転車を押す
高木の淡きこもれび自転車のタイヤに夏の風をつめをり
垂直にみる地平線右耳にのこる羊水いださむとして
しろがねの洗顔蛇口を全開にして夏の空あらふ少年
口癖を指摘された日きざみゆくキャベツの左脳にかたき芯あり
遠雷にふるむけば嗚呼、来しかたのくぼみが雨にあばかれてゐる
だとしてもきみが五月と呼ぶものが果たしてぼくにあつたかどうか
六面のうち三面を吾にみせバスは過ぎたり粉雪のなか
今日あすを繋ぐのりしろとなる刻に珈琲で煮るあたらしきネル
削ぐやうに雪を払へり信頼を得てしまひたるうしろめたさに
或る友が世界に選ばれ或る友が世界を選びなほしたり、今日
