[しゃれこうべ]
神戸がおしゃれと思わなくなるのに住めばさほど時間がかからかなった。
海を持つ場所にはかならず境界があると知った。
ひところさかんに履かせていた「ウォーターフロント」という下駄は地震でひっくりかえったが
月日は砂を運んでまたそれを埋め
神戸はまた美しい夢を消費させながら生きながらえている。
「しゃれこうべ」ということばでいつもあるひとかたまりの骨の重さを思い出す。
コンビニおにぎりくらいの面積のゆるいカーブを持つカケラを。
手渡したひとは「頭蓋」の一部だと言った。
あけておかないと腐ってしまうからと。
不思議だねえ 頭って蓋がなくても生きてられるんだ。
あの夜遺体の横に沢山の百合の花とそのカケラが置かれた。
わたしはそれを朝が来るまでにこっそり鞄に隠そうかとなんどか思った。
おとなしく焼かれてしまうまえに。
どんだけ愛したらそれができるんだろう できたんだろう
そういうことを思いながら翌日昇っていく煙をながめたことをさっき思い出した。
