意外にも
階段を登りつめた部屋には鍵などなかったのだ。
僕らは僕らの間を遮っていたすべてを、もどかしさをこらえながら毟り取ると
最後のちいさな灯りも落とした。
いつのまにか、満月は雲を置き去りにして新年の空に輝いている。

眼と指と唇を薄闇に奪われて、僕らは生まれたての仔のように寄り添い
人は人に象(かたど)られて初めて在ることを信じられるという真理を
舌で氷を溶かすようにゆっくりと思い出しては飲み込んでゆく。

太陽の465000分の1しかない月の光のもとでは
見えなかったものが見えるという。
たくさんたくさん、見たい。
同じで同じでないもの。
夜明けが降りてくるまえに。
うさのことを語る
