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[今日の奈良家裁判決]
○民法772条1項に「妻が婚姻中懐胎した子は、夫の子と推定する」とあります。別居であっても条文を素直に読めば婚姻中の男女の間に生まれた子は基本的に婚姻中の男女の子となります。推定する、というのは、推定できない事情があればひっくり返るのです。たとえば収監されてたり、とかです。
○今回のケースは別居になる前に体外受精に関して病院を受診しており、しかしその後別居にいたり、別居後に男性側の主張によると女性が勝手に書類を代筆して病院に提出し、出産に至った、ということになっています。したがって父子関係について、生物学的つながりはあることになります。で、男性側が父子関係を否定するために訴訟を起こして、裁判所は父子関係を否定しなかった、と。
○争点の一つとしては、別居が推定が覆ることになるか、という点で、今回は覆らない、という判断なのかなあ、と。もうひとつ争点があるとしたら、同意書についてなのです。以前松山で冷凍した精子を使って夫の死後に出産した事例(H17・9・14)があり強制認知の条文をつかって父子関係を争ったのですが、実は最高裁はその子と死んだ父親の父子関係を認めませんでした。その判決書きの中に「自然生殖による懐胎は夫の意思によるものと認められるところ、夫の意思にかかわらずその保存精子を用いた人工生殖により妻が懐胎し、出産した子のすべてが認知の対象となるとすると、夫の意思が全く介在することなく、夫と法律上の親子関係が生じる可能性のある子が出生することとなり、夫に予想外の重い責任を課すこととなって相当ではない」と述べていて、それを踏まえると今回の奈良家裁のケースは父子関係を認めないであろう、と思っていました。奈良家裁の判断はちょっと意外でした。
○奈良家裁から大阪高裁へ行きそうな案件なのでひっくりかえるかなあ、と。