【先週の映画】
“B級映画の帝王” と呼ばれる
ロジャー・コーマン監督を取材したドキュメンタリー、
『コーマン帝国』。

実際にメガホンをとって監督した作品以外に、
製作者として関わった作品も合わせると、その数は
400~500本にも及ぶといいます。
「早く! 安く! 儲ける!」 が 映画製作におけるモットーで、
驚異の早撮り、安上がりすぎて まるでおもちゃのようなセット、
大衆が喜ぶ 爆破や宇宙人や血みどろなどを とにかく盛り込む、という監督。
そのせいか、作品のほとんどが 基本、黒字だそうです。
インタビューに答えていた監督は、
非常に穏やかで知的な雰囲気で、撮ってる映画とは
ずいぶん遠いイメージのかたでした。 そのギャップが また 面白い。
昔から、自分の映画セットが安っぽいことは
もちろん自覚しつつも、この金額で撮るならこれが限界、
と割り切って作っていたそうです。
大手スタジオで作らず、自主制作からスタートした監督ならでは。
そのスタイルで ずっと やってきているので、
自身で、「私の映画に観客が求めるのは滑稽さだ」、と。

そんな監督自身の 映画の趣味は、
イングマール・ベルイマン監督やM・アントニオーニ監督などだそうで
(アメリカでなかなか公開されないベルイマン作品を、
コーマン監督の会社が扱って、公開したこともあるそうで)、
自らの中に 取り入れるもの と 送り出すもの の ギャップが、とにかくすごいです。
そんなコーマン監督の、驚異的早撮り・安く上げること至上の
撮影現場できたえられ、のちに映画界で活躍することになった
人々もインタビューにこたえているのですが、
M・スコセッシ監督にジャック・ニコルソン、
『ペーパー・ムーン』 のピーター・ボグダノヴィッチ監督まで、
ここには書ききれない人数の映画人が 続々登場。
こんな大物たちが、無名時代には コーマン監督の
おもしろB級映画の現場で 働いてたのか…と、なにやら感慨深いです。
現場の話や、コーマン監督をはじめ
多くの映画人のインタビューも興味深かったし、
ラストでは まさかの “泣かせ”(!)に入るこのドキュメンタリー、
これまで ほとんど知る機会のなかったコーマン監督について
知ることができ、かなり面白い作品でした。

