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あんとわのことを語る

【今週の映画②】

フィンランドのアキ・カウリスマキ監督
5年ぶりの新作、『ル・アーヴルの靴みがき』。

おもに 故郷フィンランドを舞台に撮ることの多い
カウリスマキ監督ですが、この作品では、
フランスの港町、ル・アーヴルが舞台です。

その映像で、印象的なのは やはり、色。
壁の青緑、バラとワンピースの黄色、ほかにも 赤。
カウリスマキ監督の作品では、前作 『街のあかり』 でも、
色のイメージが そのまま作品のイメージに連なるほど
印象深く、『街のあかり』 を思い出すとき、
そのイメージは ずっと “赤” です。

多くの物を置かず、清々しいまでに こざっぱりとし、
それでいて静かな美しさのある部屋、というのも印象的です。
それは、単なるセットや美術云々の話ではなく、
言葉少ないながらも印象的である台詞の数々に、
そのままイメージが直結します。
まるで、カウリスマキ監督の語り口を、
映画の美術やセットまでもが 表しているかのように感じます。
あの部屋に “現実味” は、ないと思います(実生活であの美しさを保つのは難しい)。
しかし、現実味というのとは まったく違う点での、“映画としての美しさ” です。

限られた数の言葉の中に ユーモアをにじませて、
過剰に語らず 観客を楽しませる。
清々しい語り口です。