【いま読んでる本】
中学か高校くらいの時に読んだ推理短編のアンソロジーに、今となってはトミーとタペンスのシリーズだったんじゃ、と思い当たる短編が入ってた。もうどの文庫だったかも、短編自体のタイトルも覚えてないのだけど、「ある人のオウという癖を覚えてたから殺された」という話。
なんでこの短編のそれだけを覚えてるのかというと、読んだときに「わたしもこういう理由で殺される可能性大だなあ」と強く感じたから。
いまThe Mirror Cracke'd(『鏡は横にひびわれて』。『クリスタル殺人事件』の原作ね)を読んでるのだけど、これの被害者Mrs. Badcockも同じタイプの人ね。他人を壁紙にしてしまう人。開陳することの危険性がわからずにすべて出してしまう人。selfishでなくself-center、とミス・マープルは言ってるけど。
クリスティはこういう被害者をよく出してくる、で、これを推理でなく一般小説として書いたのが『春にして君を離れ』なのかな、と。
さすがに『鏡〜』はかなり後の作品だけあって、その人物の表現がうまくなっている。
わたしは『春にして君を離れ』のラスト、彼女の夫のつぶやきにとても反感を覚えるのだけど(あそこで、彼が彼女を黒い羊にしてると思いしらされる気分になる)、クリスティがこれだけ何度もそういう人間を被害者に据えるのは、やはり『春にして〜』の彼女も同じように一種の被害者であると考えてるからなんではなかろうか。周囲の人間には加害者にしか見えないので粛正される被害者っているんではなかろうか。
何が哀れって、彼女には決して、自分の加害者性を指摘すらしてもらえず、静かに孤独に死なされてしまうことだ。
彼女を自己満足にひたってる者として静かに遠ざけることが、あるいは彼女の思うままにつきあってあげることは、本当に愛情なんだろうか。
わたしはそうは思えない。
