「はぁ、まずまずか。まずまず効いたならえかったぃのう。怪しげでも効いたらええそ。怪しげでもなあ」
ともちおは帰り際に機嫌よく言っていた。この機嫌よさの半分は、軽快な皮肉を飛ばせることの爽快感にある。
もちおは人を馬鹿にして笑う才能は天下一で、その笑顔はほがらかで純朴な青年のようである。
「でもあのひとはどうしてあんなことをはじめたんじゃろうなあ。まぁ、まずまずなら怪しいでもええわいね」
うれしそう。心から馬鹿にしている。こんな大枚はたいて文句も言わない。懐が広いのか狭いのかわからない。
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くたびれ はてこのことを語る
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尾てい骨にも問題はあるが、いまは左の股関節に問題があるのでそこを施術したとのこと。事前に送った問診にそれを書いたかどうかどうしても思い出せないけど、そこは前からこじれているところで、帰り際はわりとよくなっていた。
左の股関節と腎臓に問題があるのは母親からのエネルギーを十分にもらえなかったから、とのこと。
自宅でできることは何かありますか、と帰り際に聞いたら、ちょっとびっくりした顔をしてから、少し考えて「よく歩いてください」と施術師さんは言った。
ほとんど寝たきりで外へいけなくて困ってるって言って来たんだべ。
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「いえ、お話が途切れたので、なにかわたしが言う必要があったのかなと思って」
「いま何を考えていますか」
「さっきお話しましたが、わたしは尾てい骨を折っているのでこの姿勢で長時間座っているのは痛いなと」
「・・・」
「でも体重をこっちにかけると、お尻の筋肉もないので、骨が刺さって痛いんです」
「施術に入りましょうか」
やっとかよ!! ということでようやくベッドに横になって体の方をあれこれしてもらったのであった。
こっちはまずまずだった。これだけでよかった。
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「すぐに心が開けないという人『も』います」
また「も」か。
「まあ、誰でもいいから聞いて欲しくてたまらないという人もいるでしょうね」
そういう人に捕まってえんえん子ども時代の不幸と青春時代の不幸と現在の不幸について壮大で単調な話を聞かされることってあるからな、と思いながら窓の外のカラスに見とれて少し黙った。
「うん」
施術師さんが余韻のようにひとりごとを言っている。カラスはテレビのアンテナに止まってから飛んでいってしまった。沈黙。
「うん」
また施術師さんが空白のなかでうなづいている。何にうなづいているんだ。話の続きは?
「どうかしましたか?」
聞いてみた。
「どうかしましたか?」
鸚鵡返しか。
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また、過去の傷に触れることが必要だとしても、初対面の相手に開示してくれといわれて開示できるようなものではないと思う。そこで開示できる程度のものならそれはそれほど深刻なものではないか、表面的な当たり障りのないものだと思う、と話した。
「そういう人もいます」
も、を強調する施術師さん。
「でもこういうブリーフワークは体を外から癒すこと以上に力強い効果をもたらすんです」
「いまの大人のあなたが愛を与えることで、インナーチャイルドを癒すことができるんです」
「インナーチャイルドがどうこうということに向かう人の多くは問題を抱えているわけで…[全文を見る]
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わたしはインナーチャイルド関連でおそらくろくな本を読んでいないのだと思う、きっとまともで理にかなった本もあるのだと思う。でも、今の私の印象ではインナーチャイルド関連思想の子ども概念は現実離れしているように感じる。
子どもはちいさいけれど一人の人間だ。ひとりの人間がまったくどこも悪くなくて、無条件の愛をいつも注がれる必要があり、それを確約してやる必要があるとは思えない。そんなことは必要だとしても不可能だ。それはわたしが目の前の甥にしてやれることが限られているのと同じだ。わたしは究極的には甥に何もしてやることはできない。甥には甥…[全文を見る]
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「7歳のあなたに会ったらあなたはなんていいたいですか?」
「あんた人生苦労するよ。まあ、でも言ってもしょうがないから言わないと思います」
「あなたがその子のためにしてあげられることはありますか」
「ないですね。わたしは自分が生きていくので精一杯です。」
「こどもにですか?!」
ここで施術師さんは、なんて残酷な!という反応をしたので、このひとは子どもをよく知らないと思った。
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「じゃあ、何をしていると思いますか」
「さあ。やりかけたことがあれば続きをしていると思います」
いないんだからわかるわけないじゃん!
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「7歳のあなたはどんな風に見えますか」
「たいくつそうですね」
「どうしてたいくつしているんですか?」
「急に呼び出されて、面白いことはないし、ここには遊び道具もないからじゃないですか」
「いま何を考えていますか」
「・・・『ここにいたくない』」
「7歳のあなたを帰してください」
すかさず立ち上がっていなくなるはてこ7歳。
「はい、帰りました」
「7歳のあなたはいま何をしていますか」
「帰ったからわかりません」
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「7歳のあなたは、いま何を考えていますか?」
「・・・『帰りたい』」
「どこに帰りたいですか?」
「あの子がもといたところじゃないですか?」
「どうして帰りたいんですか?」
「知らない大人がいる知らない部屋にとつぜん呼ばれたからじゃないでしょうか」
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しょせんおまえらブルジョワにはわかるまいよ! とこころをとざすしゅんかん!
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インナーチャイルドがどうこうというのを、予告なしにやられた。
思いついた年齢の自分を思い浮かべて目の前に座らせてくださいといわれる。
「いま7歳のあなたは何をしていますか」
親指を上に向け、ひざに手を置いて座布団の上にふにゃっと正座しているはてこ7歳。
襟まわりに鮮やかな花の刺繍をした白いボヘミアン風ブラウスを着て、髪は肩まで、前髪は眼の上まである。
「くったりしています」
「なぜぐったりしているんですか?」
「『ぐったり』じゃなくて、『くったり』です」
「なぜくったりしているんですか?」
「背筋を伸ばす必要がないと思っているからじゃないですか?」
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二人になってからほとんど寝て暮らしているようなものだけれど、寝ていて治るのは健康なときだ。もうすぐ10年になる。
寝ていても筋肉が落ちるばかりなの。ある程度動いたり、働きかけたりするものが必要なの。
わたしはお年寄りみたいなもの。動かないと死へ向かう。でも動ける資源は限られている。
動くことにはふつうのとき以上の苦痛と疲れが伴う。
だからたのしいこと、やりがいのあることで動きたい。痛くて苦しいことをするんだから。
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一人暮らしのとき、「とにかくいまはゆっくり体をやすめて」と言われるたびに、生活費と家事はどうすればいいの、と思った。
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椅子に座っていられなくなって、床に座り込んで壁にもたれてぐったり話していても、眼と口調さえしっかりしていれば、ひとは相手を病人だとは思わない。
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甘露じゃないよ、雨露だよ、IMEのばか!
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「何がいちばん困りますか」
「体が弱って働けないことです」
「働けないとどうして困りますか」
「ひとりで暮らせなくなるからです」
「ひとりで暮らせないと不安ですか」
「暮らせなかったら、死ぬしかないですよね」
こういうことを聞くひとって、地に足がついてないと思うんだよね。
きみんとこにくるのだって身銭を切っているんだよ。娯楽じゃないんだよ。
「働けないと自分に価値がないように感じる」とか
「自立しなければ愛してもらえない」とか
なんていうの、思想的な甘い話をしているんじゃないんだよ。
ご飯を食べて、甘露しのいで生きていかなきゃいけないの。
体が資本なの。
そのために病院行ったり、病院で見られない症状を扱うっていうところにきたんだよ。
思想を買いにきたんじゃないんだよ。
くたびれ はてこのことを語る
わたしはカウンセリングは病院で足りてるから、べつに話きいてほしくないし、それ以上にわたしの人生にひとに入ってこないで欲しいんだよね。
ただ虚弱をなんとかしたいだけで。
カウンセリングという名の下に人生の意味を探ると称してわたしの過去にレッテルを貼られるのは、もっとノーサンキューなんだよね。
くたびれ はてこのことを語る
さっき見たカウンセラーのwebページから。
「カウンセリングはさいてい週2回受けるべきだとわたしは考えています。
費用についてはどうにかして捻出するほかありません。」
価格1回15000円 →週3万円 月12万円 半年60万円
この価格設定は貧乏人避けということでよろしいでしょうか。
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はてなと無関係のひとがすすめていた本を数冊図書館にリクエストして読んだ。
三冊中、二冊が大はずれ。どうしてこんな整合性のない表面的な本を良書としてすすめているんだ。これは著者の商売のための宣伝本だろう。
もう一冊はよかったので、シリーズでまとめて読んでいる。これを読んだひとのレビューを検索すると崇拝に近いレベルで絶賛しているものが多い。え、もっと冷静で論理的な本だよね? 牛と自閉症について考察したテンプル・グランディンの本と似たものを感じたんだけど。ほんとに同じ本を読んでそう言っているの、あなたたち。
本をすすめていたひとに会ってみようかなと思っていたんだけれど、やめておこうという結論に達した。
じぶんが見たいものを見るひとのように思えたから。
/くたびれ はてこ