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読了のことを語る

『リジー・ボーデン事件』 ベロック・ローンズ(著) 仁賀克雄(訳) ハヤカワ・ミステリ
なぜ彼女が殺人を行ったのか、の一つの解決の提示として書かれた推理「小説」だが、わたしはむしろ、なぜそこまで彼女が犯人であることが定説になってしまったのか、の方が気になってしまった。状況証拠しかなくて裁判で無罪が言い渡されたにも関わらず、である。「疑わしきは罰せず」の原則が生きた裁判だったのだろう。ならば、著者は彼女を直接名指しした「ファクション」ではなく違う形、せめて別名を与えることはできなかったのだろうか。
途中で、シャーリー・ジャクソン『ずっとお城でくらしてる』はリジー・ボーデンにインスピレーションを得たものだったのか、と思い当たった。リジーと姉と町の人々の、その後を描いたのか、と。小説としてはあちらの方が数段上と感じる。
あと、訳がすごく読みにくかった。誰の述懐なのかと迷うことしばしば。もしかしたら原書で読んだ方がわかりやすいかもしれない。