昨夜寝る前にお布団で何かちょっと読もうと思って、たまたま買ったままそこに積んであった保坂和志「猫の散歩道」を手にとって読み始めたら、ごく最初の方でこんな一節に出くわした!
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三浦半島で生まれ育った人から「保坂さんの小説には海辺の人間特有の怠惰さがある」という見事な指摘をされたことがある。自然を信頼している人間は怠け者だという意味なのだが、怠け者でなければ得られない充実感が外の人にはわからない。働いたら充実感が得られるなんて大間違いで、人生の充実感とは究極的には、江ノ電の駅のベンチにずうっと座って、海や山や空を眺めているときに得られるようなものなのだ。
外の人は、そのときの光を崇高で特別なものとイメージするだろうが、あるのはありふれた光だけだ。それで充分なのだ。
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そうです。それで充分なのです!