/短歌

水底で水の涸るる日を待ちぬビー玉ひとつの座標をたよりに

レコードの針落とすよな優雅さにまたいちねんのさよならをいう

返る屋根離れゆく月見おくりぬ石の木立ちと黙する鐘と

刃（やいば）より先にサクリと割れにける寒天の名は女性名詞

光よりはやく降ってきた音に周波あわせる耳を上げる

七夕やお迎え帰りのママチャリは緑のしっぽをながながと曳く

せんろ脇今日の残滓を飲みほして結ぶ希いの七色十色

三叉路や祠まいりの背を浚う排水溝のサラウンドスピーカー

薔薇色とよぶにふさわしき唇にヌルイ雨だけが語りかけ

半夏生かたみを白く染めた帆を掲げ漕ぎだすよ星の海

半夏生
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8D%8A%E5%A4%8F%E7%94%9F

蝉のこえはこぶ線路は冷えており七夕月のさいしょのあさは

こしあんの藤をかきけす粒の群れ名に酔うひとの群れ墜ちるさま

春と夏つなぐ苔の絨毯や石のパズルに眠るアズール

どこにでもどこまででもいけそうな長靴で恋踏みをする

スーパーボール想い浮かべるこの月の返歌とともに還りくる日は

満月と出会い頭の衝突や車の川を渡る橋で

耳をたてランダムステップ追いかける旋律の見いだせないまま

高く低く斑模様のせめんとの大地にひとつ惑星（ほし）堕ちて

風ゆきて雲たち来らむみなづきの青は薔薇の残像となり

花褪めてくちびる二本のライン引く平行などはあり得ぬリアルに