/短歌

閉じた窓越してささやく雨音に活字虚しき十四夜かな

ホチキスを刺して番（つが）ふる痛みさえとうに忘れて小春日和

式部の実つゆを被れるきらめきは石よりもなお海よりもなお

諦めをひとつひとつに踏みしめる中之島は秋めいてをり

闇に張る湾岸橋の細糸を弾けば音符はきみまで飛ぶやも

ゆくひとの風の速さに身をすくむ街路樹もほら秋を見ている

ただ君の手というだけの魔法なりスラーは波に音符は鳥に

恋病めば陽の駈け落つる濃い闇に錨おろして潮を待つなり

路地に立ち塊ほぐす糸口をつかまえあぐる二度目の秋かな

きみの影踏んで歩みしこの５年ずっと句点を手にしている

オレンジの風がささやくそう遠くない場所にあなたが居るということ

チリリンと夜道をゆけばいづこから虫のコロコロ恋はこれから

手をふって夕陽見送るひまわりの肩越しに言うキミにＴｈａｎｋｓ！

雷門を見上げる貌が眩しくて
あなたひまわり俺どさまわり　　by 寅　　（すいません、ふざけましたｗ）

かなかなと何を不思議に思うてか蝉も人も問いは終わらぬ

茄子の尾を咲（ひら）いて生まれむ黄緑に夏をば惜しむ午後の酒かな

蒼き音きしきしきしと水茄子や晩夏の火照り鎮めけるかな

昼下がり彼が残したオレンジをコアントローで後追いす

風狂う庭で踊るは百日紅（さるすべり）珊瑚細工のかんざし揺らして

喰はれゆく陽に神を見て罪を悔ふアイス勝手に食べてごめんね