昔あるところにテッド・ネルソンという神が居た。
 テッド・ネルソンはあるとき、机の上に何冊か本を伏せて置き、手に顎を突いて、窓から空を眺めつつ何事か考えていた。しかしキッと机を睨み付けると、本を抽き出しに投げ入れ、そのまま机を担いで庭に投げ捨て、火を着けて燃やしてしまった。
 ネルソンは机の燃えた跡の灰を集めて、間のない堅籠に詰め、何かの種子が入った小袋を腰に括り着けると、見晴らしのいい丘に登った。そして土を掘って、種子を植え、土盛りをして、その上にあの灰を降り掛けながら、こう唱えた。

「ハイパーテキストあれ」

 そして再び灰を降り掛けながら、また唱えた。

「ハイパーリンクあれ」

 1965年のことだった。
 やがてこの丘には大きな樹が育ち、それは「ザナドゥ」と呼ばれた。春になるとザナドゥの樹には沢山の花が咲いた。見上げる者は誰もがその花の美しさに嘆息した。
 だが、いつまで経ってもザナドゥの樹には実が成らず、成ったとしても誰もその実を食べられるようにする方法を知らなかった。


 それからおよそ25年の歳月が過ぎた。相変わらずザナドゥの樹は結実せず、誰もが花を見上げるばかりだった。
 そこに、ティム・バーナーズ=リーという神がやって来た。バーナーズ=リーは、ザナドゥの花を見上げる人々に向かって、こう言った。

 「果実が採れないなら、花を見ながら団子を食べればよいではないか」

 バーナーズ=リーはザナドゥの樹から枝の末をわずかばかり折り取って、削って串を作り、その樹の枝に巣を張っていた蜘蛛の糸をその串でくるくると巻き取りながら、こう唱えた。

 「世界にウェブあれ」

 串に巻き付いた蜘蛛の糸から団子ができた。この団子は「ワールド・ワイド・ウェブ」と呼ばれた。ウェブの団子はザナドゥの樹に較べて、とても卑小で、少しの要素しか持たず、美しくもなかった。しかし、この団子はザナドゥの影を映すし、ときどき花びらも落ちてくる。なによりウェブは現に食べることができた。

 やがてワールド・ワイド・ウェブは多くの人の手に渡った。




*これは事実に基づいた冗談であり、実在の人物や団体とは少ししか関係ありません。